ライブレポート

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『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』DAY2


10月6日(日)早朝、桜島が噴火。気象庁の調べによると“やや多量の降灰”がある中、開場時間を迎えた『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019(以下、GSH)』2日目。鹿児島人にとって桜島の噴火は珍しいことではないらしいが、ヘスでの降灰は初めて。前向きに考えると鹿児島弁で“灰”の意味を持つ“ヘ”をタイトルに付けたこのヘスが、灰をかぶることでやっと桜島に認められたということだろう。降灰はあるけど、雲はひとつもない快晴に恵まれた2日目の朝。

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前日同様、期待に胸を膨らませたたくさんの人たちが、開場時間の7時から会場を訪れていた。Welcome Actを心待ちに、ステージ前に集まる観客。そして地元グルメはもちろん、全国から美味しいお店が集ったフード&ドリンクエリアや、オフィシャルグッズ&アーティストグッズ販売、鹿児島のお土産や雑貨の屋台や鹿児島の伝統工芸品である大島紬を使った作品制作や漆芸の工芸体験と言ったワークショップが並ぶエリアなど、見どころ満載な与論エリアを楽しむ観客。たくさんの笑顔が溢れ、どこに行ってもお祭りムード満載な「GSH」は、ライブが始まる前からずっと楽しい。

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9時20分になり、大隅ステージではいよいよWelcome Actのライブがスタート。ステージに登場したのは「WALK INN FES!」推薦アーティストである、鹿児島を拠点に活動するスリーピースバンド、BACKSKiD。青空の下、ステージに登場した3人。「サツマニアンヘスにようこそ!」と優しく告げると、疾走感ある演奏と爽快な歌声でオーディエンスの気持ちを高ぶらせる。MCでは「WALK INN FES!」があったから、自分たちがこの場にいることを語り、ラストは全ての戦う人に送る「Fighting man song」を全力でプレイ。地元への愛とステージに込めた想いがしっかり伝わり、気持ちを熱くしてくれるライブだった。

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そして、いよいよ迎えた開演時間。初日に続いて、発起人タブゾンビが2日目の開催を宣言すると、トップバッターとして薩摩ステージに登場したのは、大分発のスリーピースバンド、SIX LOUNGE。1曲目「僕を撃て」から、骨太なサウンドと誠実なボーカルでオーディエンスの心を掴むと「LULU」「トラッシュ」と続き、観客がステージに釘付けになる。シンプルかつストレートに胸に突き刺さるサウンドと、ヤマグチユウモリ(Gt/Vo)の言葉は初めて観る人だって夢中にさせる。「朝だからって、手ぇ抜くなよ!」と激しくラウドにロックンロールを鳴らす中、ラストに披露した「幻影列車」は、桜島の空に響く伸びやかな歌声がしっかり心に残った。

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「17才」で始まるや、爽快かつセンチメンタルな歌と演奏で会場を自身の色に染めた、大隅ステージのトップバッターとなるBase Ball Bear。「秋フェスかと思ったら夏ですね」と小出祐介(Vo/Gt)が笑うと、「新曲が出来ました。秋っぽい曲ですけど、やっていいですか?」と「いまは僕の目を見て」を披露。関根史織(Ba/Cho)と交互にボーカルを取った「ポラリス」、コール&レスポンスや小出のラップで沸かせた「The CUT」と多くの魅せ場を作った彼らのステージ。「夏みたいな秋の日がみなさんの思い出に残りますように」と演奏した「ドラマチック」の<夏ってる 永遠に続きそうで>の歌詞は、この時間が永遠に続けば良いのにと思うオーディエンスの気持ちと抜群にマッチしていた。

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1曲目「愚か者たち」の貫禄さえ感じるロックサウンドと圧倒的存在感を放つ、松尾レミ(Vo/Gt)の力強くハスキーな歌声で会場の空気を変え、オーディエンスを釘付けにしたのは、薩摩ステージに登場したGLIM SPANKY。亀本寛貴(Gt)が唸るギターで存在感を示した「TV Show」、曲が始まるや大きな歓声が上がった「怒りをくれよ」で会場を熱くすると、火山灰の降る桜島に「灰の中でライブやるのもいいもんですね」と笑顔を見せる松尾。ライブ終盤は気持ちいっぱいに歌ったロックバラード「大人になったら」でオーディエンスを魅了すると、広大な桜島のロケーションと抜群にマッチした「アイスタンドアローン」の壮大な演奏とたくましい歌声で聴く者の心を震わせた。

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「神様」のエッジィなサウンドに乗せた、yui(Vo/Gt)のキュートで力強い歌声で始まったのは、大隅ステージのFLOWER FLOWER。サビの開放感が心地よい「パワフル」から、バラードソング「とうめいなうた」と、まさに美しい花が咲きほこるように、バンドの魅力を様々な角度から魅せる。MCではmura☆jun(Key)が鹿児島出身であることを報告し、ヘス出演の喜びを語る。鍵盤の音色が印象的だった「時計」で始まった後半戦は、終始楽しそうに演奏するメンバーにオーディエンスから自然と笑顔が溢れる。ラスト「バイバイ」を歌い終え、ステージを去るyuiはすごく名残惜しそうに見えた。

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MCで本人も「驚いた」と語ってた熱烈な“きゃりーコール”に迎えられ、薩摩ステージに登場した、きゃりーぱみゅぱみゅ。着物風衣装に「可愛い!」の声が上がる中、4人のダンサーを従えて始まった「原宿いやほい」で明るく楽しく派手やかにライブがスタート。「CANDY CANDY」「ファッションモンスター」「にんじゃりばんばん」と人気曲の連発に、会場中が歌い踊る爆発的な盛り上がりはワンマンさながら。MCではおばあちゃんの家が鹿児島県薩摩川内市であること、子供の頃からよく車で鹿児島に来ていたことを語り、「昨日も黒豚とんかつとかき氷を食べて、鹿児島を満喫しました!」と鹿児島愛を伝えたきゃりー。<想像以上に近いの キミとの距離は 同じ景色見てる>と、観客との距離をグッと縮めた「キズナミ」で会場中の気持ちをひとつにした。

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きゃりーぱみゅぱみゅのピースフルな空気から一変。Koie(Vo)のシャウト一発で地獄に叩き落とし、世界基準のヘヴィサウンドで会場中を圧倒したのは、大隅ステージに登場したCrossfaith。「Kill 'Em All」で会場中がジャンプを合わせて桜島を揺らすと、「順番ヤバない? 俺ら、ファッションモンスターやなくて、ガチのモンスターやから」とニヤリ。「Wildfire」のタオル回しで熱風を起こし、「Jägerbomb」では「やりたいことあんねんけど」と、フィールド中央にあるPA席のテントを全力で周回する巨大サークルモッシュを起こし、全ての人を飲み込むライブモンスターと化して観客を熱狂させた。ラスト、メラメラ燃えるオーディエンスの熱に油を注ぎ足すように投入されたのは「The Perfect Nightmare」。桜島を再び起こしてしまいそうな重低音とKoieの咆哮にウォールオブデスが生まれ、フィールドはカオス状態となった。

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「桜島、はじめまして!」と挨拶すると、「お客さんのリクエストで呼んで頂いたと聞いてます。初めての鹿児島、30分で自分たちを知って欲しい」と、代表曲と言える「狂乱 Hey Kids!!」でライブをスタート。ヘス出演を待ち望んだ観客を大興奮させ、会場の熱を急上昇させたのは、薩摩ステージに登場したTHE ORAL CIGARETTES。「ワガママで誤魔化さないで」で手を振り一体感を生むと、山中拓也(Vo/Gt)が「嫌なことや悲しいことを忘れて下さいとは言いません。嫌なことも全部歌にして吐き出すのが、THE ORAL CIGARETTESだと覚えて帰って下さい」とバンドのスタンスを語り「5150」を熱唱。「自分たちを知って欲しい」の言葉通り、激しくダンサブルにエモーショナルにと様々な表情を見せたライブは「BLACK MEMORY」で会場中が声を重ね、「LOVE(Redone)」で心を重ねて、30分の短い持ち時間を十分に活かして幕を閉じた。

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大隅ステージ前のフィールドを超満員の観客が埋める中、「上海ハニー」で勢いよく始まったORANGE RANGEのステージ。「沖縄と気持ちをひとつにしましょう」とHIROKI(Vo)が煽り、カチャーシー(沖縄の踊り)の手振りや「イ~ヤサァサァ」の掛け声を合わせると、会場に強い一体感が生まれる。沖縄の風を吹かせた「Ryukyu Wind」で桜島を沖縄色に染めると、「以心電信」で大合唱を生む頃には会場を完全掌握。「これから新曲やるんですけど、打ち合わせアリで盛り上がってる風に見せましょう」とHIROKI(Vo)がいたずらな顔で語り、掛け声やタオル回し、さらには合唱の練習まで打ち合わせて臨んだ「Enjoy!」は、キャッチーな曲調も手伝って、異常なほどの盛り上がりを見せる。強烈な太陽の光が射し込む中、「イケナイ太陽」「キリキリマイ」と最後まで会場を沸かせ続けた。

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不穏なサイレンの音が鳴り、薩摩ステージに登場したのは、昨年に続く出演となるSiM。「行けんのか~!」とMAH(Vo)が叫び、「A」「DiAMOND」を続けて放つと、「SiMを知らなくても、この曲を知らないのはどうかと思いますよ?」と始まった曲は「KiLLiNG ME」。完全に着火したオーディエンスのモッシュが波打つ中、MAHの指示で全員を座らせて一斉にジャンプ。続く「Faster Than The Clock」では「走れ~!」と煽り、巨大なサークルモッシュが生まれる。SiMを初めて観る人、フェス初参加の人に楽しさを伝授するように、丁寧かつ激しくライブを進めた彼ら。MCでは「次に会うのは1年後でなく、息遣いまで分かるライブハウスで!」と再会の約束を交わし、「これも知っとけよ」と「Blah Blah Blah」でさらにフィールドを掻き回し、次に会う日への期待を煽った。

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この夏も全国のフェスをアゲまくった、Dragon Ash。大きな歓声に迎えられて大隅ステージに登場すると「Mix It Up」「Headbang」を投入し、序盤からフィールドをブチアゲる。続いて、この日もサポートとして参加したT$UYO$HI(Ba)と作り上げた最新曲「Fly Over feat. T$UYO$HI」で最新型のDragon Ashを見せると、MCでは「俺たちに感謝なんてしなくていい。来てる人がいないとフェスなんて成立しない。フェスもライブハウスもお前らのもんだからな」とKj(Vo/Gt)が告げ、“もっと自由に、もっと楽しめ”という意味にも取れるメッセージをオーディエンスに送ると「今日だけ夏が戻ってきちゃったみたいだね」と笑顔を見せた「百合の咲く場所で」、観客の渇望感が凄かった「Fantasista」と盛り上がり必死のキラーチューンを放ち、最高潮の盛り上がりを生んだ。

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桜島に夕陽が射し始めた頃、ハナレグミが大隅ステージに登場。ラウド系のアクトが続く中、薩摩ステージに登場した永積タカシ(Vo/Gt)がギターを鳴らした瞬間、桜島の大自然に音が溶け込み、会場の空気が変わる。ゆったりとしたビートに自然と手拍子が起きた「大安」、音と同化するスキャットやダンスで見せた「Primal Dancer」と続き、吹き抜ける涼しい風と音楽の心地よさに会場中が酔いしれる。「明日天気になれ」を披露した後、「僕は風景を描いた曲が多いので、今日は風景の中で踊ったり飲んだり、自由に楽しんで欲しい」と永積。青空の下、ラウドな音楽でモッシュするのもフェスの楽しみ方だが、こうして大自然の中で優しく牧歌的な音楽に包まれて、心を開放するのもフェスの醍醐味だと改めて気付かされた。

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激ヘヴィなサウンドと攻撃的なステージングで観客のド肝を抜いたのは、大隅ステージに登場した、coldrain。「REVOLUTION」「ENVY」でスタートダッシュを放つと、「ホルモンのためにあなたたちの体力を残すつもりは1mmもありませんから!」と、Masato(Vo)が断言。中盤戦はライブ人気曲に彼らの最新型である「THE SIDE EFFECTS」も混じえた最強メニューで沸かせ、オーディエンスの体力を奪う。「来年も出たいんで、そのためには今年、爪痕を残さないと」と「F.T.T.T」でサークルモッシュを起こすと、ラスト「The Revelation」では、Koie(Crossfaith)が乱入。まだ暴れ足りないオーディエンスが巨大サークルモッシュが起こし、十分すぎる爪痕を残した。

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ダイスケはんのヘルニアで、昨年は無念の出演キャンセル。悲願のヘス初出演となった、マキシマム ザ ホルモン。SEと出演を待ち望んだファンの大きな歓声に包まれて、薩摩ステージに登場すると、テンションMAXの「恋のメガラバ」で1曲目から爆発的な盛り上がりを生む。続いてナオが「今日、夏フェスラストだよ? こんなで夏を終わらせられるの?」と煽り、「三度の飯より」「飯が好き!」の掛け合いから、「maximum the hormone Ⅱ」で始まる、激ヘヴィでアッパーなライブチューンを次々と投下。モッシュやヘドバンで、フィールドをぐっちゃぐちゃに掻き回す。MCではダイスケはんが「錦江湾渡るのに1年かかったぁ!」とやっとヘスに出演出来た喜びを語り、「ちょっと写真撮っていい?」と舞台袖に消えると、帽子にサングラス姿のキモトさんに扮して、ガラケーを構えながら登場するという小ネタで笑わせる。ラストは「シミ」の全力アクトでオーディエンスへの感謝の気持ちを伝え、「恋のスペルマ」をぶっ放してフィニッシュ。悲願のヘス初出演にバンドも観客も完全燃焼した。

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昨年はSOIL&"PIMP" SESSIONSの客演として、ヘスに出演。今年は大隅ステージのトリとして、待望の単独名義出演となった椎名林檎。桜島に宵闇が迫る頃、「丸ノ内サディスティック」でライブが始まると、美しいエレクトリックピアノの和声に乗せて、艶やかな歌で忽ち会場中を魅了する。タブゾンビ(Tp)と栗原健(Sax)を招いて披露した「マヤカシ優男」、ピアノトリオが躍動する「TOKYO」、「旬」では流麗で濃密な音を響かせ、オーディエンスの心を揺さぶった。衣装の早替えを挟み、ライブは終盤へ。新曲「公然の秘密」ではチューブラ・ベルの演奏、「殺し屋危機一髪」でピストルを撃つパフォーマンス、と魅せ場を散りばめながら、美しく凛とした歌声を聴かせる椎名。楽曲を彩るホーンセクションや巧みなバンド演奏も圧巻。このままずっと終わって欲しくないと思うほど贅沢な時間だった。「カリソメ乙女」を歌い終えた椎名がステージを去った後、観客の拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

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2日間に渡り、豪華出演陣が繋いできたバトンを最後に受け取った「GSH 2019」の大トリは、サンボマスター。SEと大観衆の歓声と掛け声で薩摩ステージに登場すると「青春狂騒曲」でライブの幕を開ける。最高だった2日間の有終の美をみんなで飾るべく、山口隆(Vo/Gt)は「終わり良ければ全て良しですよぉ!」と叫び、「ミラクルをキミとおこしたいんです」では「あれ? 大トリですよね? 桜島こんなもんですか?」と挑発しまくって会場の熱を上げる。歌と演奏にたっぷり気持ちを込めて歌った「ラブソング」を優しく切なく聴かせた後、「ロックンロール イズ ノットデッド」で始まった後半戦は、再び熱量を上げて急加速。「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で最高潮の盛り上がりを生むと、「お前らがクソだったことなんて、たった一度もねぇ! それを証明するためにここに来たんだよ!」と叫び、「居場所がない? 今日、居場所を作ったじゃねぇか。これで終わりじゃねぇ、ここから始まるんだよ!」と、一人ひとりに向けて真摯なメッセージを届けた山口。多くの観客が涙を見せる中で始まった「輝きだして走ってく」は最高の2日間を締めくくるに相応しい、感動的なフィナーレを生み出した。

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薩摩ステージと大隅ステージの全てのアクトが終演した後、与論ステージではCLOSING ACTのライブがスタート。鹿児島県奄美大島出身の城 南海が歌う、奄美の民謡であるシマ歌が、お祭り騒ぎの終演を告げる。帰り道、桜島フェリーで帰路に着く観客に疲れは見えず、誰もが楽しそうに笑って、今日の思い出を語っていたのが印象的だった。そう、桜島の地でたくさんの素晴らしい音楽に囲まれて、たっぷり力を蓄えて。来年、再びこの地で会う約束を交わし、明日からまた走り出すのだ。来年のこの季節、桜島で会いましょう!

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